『日日是好日』(森下典子・新潮文庫)
中学生のころ父が買う「週刊朝日」に、女子大生ながら体験レボートを連載していた(ような気がする)、森下典子さん。茶道の本を書いたというのは知ってはいました。
『日々是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』
文庫化されたのを見てふと手に取ったのは、なにか軽いリラックスできるものが読みたかったから。
確かにさらっと読める本でしたが、ちょうど今の私のために書かれたような本だったのです。こういうのを、なんて言うのか。偶然の出会いなのに、何かに導かれているようなこと。
お茶のお稽古で、森下さんが長い時間をかけて自分に沁みさせていくことは、過ぎてしまったことに立ち止まらずに、しがみつかずに、気持ちを切り替えて、今、目の前のことをすること。「今」に気持ちを集中すること。お釜の前に座ったら、ちゃんと心も身体も、お釜の前にいること。頭で考えて覚えるのではなく、繰り返し続けてきた身体を信じること。
これから先、私がお茶を習うことはないでしょう。でも私も、いま、身のあるところに心もちゃんといれるようになりたい。目の前のものをしっかりと見ることができるようになりたい。理屈のフィルターを通さずにやるべきことを決めていくことができるようになりたいと思います。今年この本を読んで、よかった。